日本のストリートフード寿司。
美しい流線型フォルムに宿る、小さな宇宙

寿司と聞くと、口の中にどっと唾が湧き出てくる。
お酢の香りとともに、条件反射する食欲。
お祝いをするときは、寿司が多い。
そもそも、寿司は当て字で、
「寿を司る」と言う縁起のいい言葉の組み合わせ。

とても庶民的だが、高級品。
その味の奥深さは、まるで宇宙そのもの。
美しい流線型のフォルムに宿るその小さな宇宙は、
シンプルでいて、奥深い。
今でこそ高価なものというイメージが強いが、
その誕生は、屋台でさくっと食べるものだった。

そう、寿司とはストリートフードなのである。
立って食べるスタイルの寿司には、スピードが命だ。
それは新鮮な魚が届くまでのスピードであり、できあがるまでのスピード。
出来上がってから食べるまでのスピード。
寿司に流れる、その心地いいテンポもおいしさを感じられるところだ。

ここでは、そのテンポを味わえるよう、寿司の食べ方を中心に紹介する。
日本にいるのだから、ぜひ美味しい寿司を食べてほしい。
どこでも構わないが、どうせなら中心地である築地市場のお店で。
そんなに畏まらず、合間を見つけて寿司屋にいってほしい。
なぜなら、寿司とは手軽に食べるストリートフードなのだから。

男の街で生まれた寿司。その起源とは?

寿司のはじまりは、東南アジア。川魚を米などの穀物にいれて自然発酵させ、
保存食にしていたことが起源だ。
その後奈良時代に、米の上に発酵させた魚に塩を振って食べる鮓が中国から日本へ伝来。
この頃は、川魚が中心だった。滋賀県近江のフナ寿司には、いまでもその形が残っている。

しかし、いま私たちが食べる握り寿司のスタート地点は、江戸時代後期。
もともとなにもなかった場所である江戸に、日本の中心地をつくろうと奔走したため、
圧倒的な労働力が必要だった。さらに地方から参覲交代で、男性の単身赴任も多い。
江戸は男の街だったのだ。
しかも武士を中心とした社会構造なために、
階層はガチガチに縛られず上下関係がそこまで厳しくない社会。

だから、他人同士で肩を並べて食べるストリートフードが大流行。
「妖術という身で握る 握り寿司」、と川柳でいわれたほど話題になった。
まるで妖術のように素早い手の動きと、
短い時間で食べられることが、寿司がストリートフードとして人気を博した理由でもある。
それゆえ、はや寿司とも呼ばれていた。
いまでも店内にあるカウンターは、当時の屋台の名残なのだ。
ちなみにこの頃は、職人が座りお客が立つという、今とは真逆のスタイルだった。
さらに、寿司を食べた手を拭くにも当然おしぼりなどはなく、ときには暖簾で拭いていた。だから、暖簾が汚いお店=人気店、などと言われたり言われなかったり...

もともとはおにぎりサイズ。
戦争によって、小さくなっていく寿司

実際、江戸時代に出されていた寿司は大きかった。
おにぎりサイズで、いまの5-6倍ほど。
このころは、食事というよりはおやつ感覚。
これが今のサイズになったのは戦争がきっかけだった。日本が戦時中のころは、食べる量を減らさねばならないほどの食糧難。
だから、これだけ食べればいいだろうという基準が小さかった。
それがいまの一貫の大きさとなり、定着したのだ。
また、マグロのとろが食べられるようになったのは、第二次世界大戦以降。
それまでは赤身のみ食べられていたが、
日本人の味のテイストが洋風に変わったことで、とろは大人気になった。

屋台が終わり、クルクルまわる回転寿司が現れる
戦争によって、小さくなっていく寿司

もともと寿司屋は屋台で営業していたが、
衛生上の理由から廃止され、店の中に屋台を運び提供した。
その名残こそ、今のカウンターである。

また、東京を襲った関東大震災の影響から、地元に戻った寿司職人たちによって、
寿司は全国にその市民権を持ち始めた。
そして経済成長とともに、社交場としてお酒を飲みながら会食する場になり、
徐々に寿司=高級というイメージが定着。
そんな中、元禄寿司というお店が、1958年に一番はじめての回転寿司を提供した。
だれでも手軽に入れる庶民感と、オペレーションコストの低下によって、
たちまち日本を超え、寿司はSUSHIへと変貌を遂げていく。

寿司から、SUSHIへ。世界に広がるSUSHIブーム

寿司を一躍世界に広めたのは、肥満の多いアメリカでの健康ブーム。
ヘルシーさが受け、サラダを混ぜた寿司は大ブーム。
とくにロサンゼルスをその発祥とするカリフォルニアロールが、火付け役になった。
カリフォルニアに、安価でおいしいカリフォルニア米があったことも大きい。
そのムーブメントに乗り、回転寿司も瞬く間に世界へと広まり、
アメリカだけでなくヨーロッパ、東南アジアをはじめ大ブームとなった。
世界のどこでも食べられるようになったSUSHI。
実際、その食べ方に決まったルールはないものの、
マナーを知った上で食べると気持ちに余裕が出るし、何よりおいしく感じる。
ここからは、その食べ方をご紹介。

「テンポ」が大切。寿司の食べ方

1:予約する

まず、有名店はなかなか予約が取れないため、早めに連絡するのがベター。
お店に行く前のエチケットとして、強い香水はつけないでおくこと。
寿司の風味を損ねるだけでなく、まわりのお客さんの迷惑にもなる。

2:カウンターに座る

板前さんの動きを近くで見るほうが美味しく感じるため、カウンター席がおすすめ。
コミュニケーションが取りやすいのもポイントの一つだ。
わからないことがあったら聞いてみよう。

3:頼む順番は淡白なものから

特に決まりはないが、たとえば、イカ、タコ、など、
味が比較的薄い、淡白なネタから頼むとおいしくいただける。
そして徐々に味を濃厚なものにしていくことでネタの風味、味わいを楽しめる。
おまかせの一人前を頼むとハズレはない。

4:できるだけまんべんなく食べる

一つのネタにフォーカスしすぎず、できるだけ楽しむように。
その時に旬なものはなにか、聞くのも手。
旬のネタは下記に紹介するので参考に。

5:出された寿司はすぐ食べる

握りたてが一番美味しい。放置していると、乾燥して本来より味が落ちてしまう。
出されたら、すぐに食べるのが職人に対する礼儀でもあり、テンポもいい。

6:醤油は少なめに

ネタの味を楽しむためにも、醤油はつけすぎないように。
そのため、お皿にはあまり醤油を入れておかないほうがベター。
またワサビを醤油にいれて溶かさないように。
ワサビが強すぎてネタの味がわかりづらくなる。
ちなみに、穴子などの甘いたれがついたものには、醤油をつけない。

7:手づかみでいくか、箸で食べるか

どちらで食べても問題なく、自分の好きなほうで大丈夫。
ただ、フォーマルな場では箸で食べるほうが多いが、特に決まりはない。
手づかみの場合は、
親指と中指、人指し指で挟む。

8:手づかみでいく

裏返しにして、ネタ先に醤油をすこしつける。
そのまま口の中に運ぶ。

9:箸で食べる

箸の場合は、そっと箸を両脇から持ち上げ、寿司を横に倒し、ごはんの側ではなくネタの先にすこし醤油をつける。
あまりつけすぎると、ネタそのものを楽しめない。

10:食べるときは一思いに

ふたつにちぎったりせず、食べるときは一思いに。このとき、寿司とネタを別々に食べてもいけない。一思いに。

11:ガリの食べ方

生姜を甘酢で漬けたガリは、何もつけず寿司と寿司の合間に食べるのがオススメ。
口がさっぱりするので、脂がのった寿司の後味を変えてくれる。
さらに、食中毒予防などの殺菌効果も。

12:軍艦巻きの食べ方

そのまま、ネタを上にしてシャリの部分につけるか、横側につけるやり方が多いが、ガリを使うのをオススメしたい。
醤油のあんばいが難しいため、がりにしょうゆを浸してネタにつけるといい。
ガリとは一緒に食べない。

13:余裕をもって気持ちよく

以上が簡単なルールだ。
しかし、ルールに縛られすぎないように。
絶対に守るものでもなく、大切なのはお寿司を楽しむこと。
なぜなら、寿司とはストリートフードなのだから。
寿司を食べたいと思いついたら、サッと寄ってみてほしい。
回転寿司でも、まわらない寿司でも。
一つ一つのネタの奥深さ、
小さな宇宙を口の中で存分に楽しんでほしい。

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