クラフトビールという言葉を、よく聞くようになった。コンビニでたくさん売られていたり、居酒屋で飲むようなビールとは違うことはわかるけど、それ以上のことはあまりよくわからない。というより、そもそもビール自体、いつ生まれたのか、どうやって造られているのか、詳しくは知らない。
そこで、少し調べてみた。まずはビール誕生の歴史。ビールは新石器時代、麦から造られたパンが雨に濡れ、偶然発酵して生まれたのだという。最古の記録としては紀元前3000年のメソポタミア文明で、くさび形文字で記録したものが残っている。これを起点とすれば、ビールの歴史は5000年。はるか昔から、人々とともにあったお酒だったのだ。
それから長い歴史の中で、中世にはフランク王国のカール大帝がビールの醸造を推進して、ワインより低く見られていたビールの価値が向上したり、キリスト教では修道院での醸造が盛んになったり。
造り方も変化し、多様化してきた。基本的には、麦芽、ホップ、水、副原料の4つを使ったものが主流。麦芽を砕いたものに水と副原料を加えて麦汁と呼ばれるジュースを作り、それを殺菌効果のある香り高いホップと一緒に煮る。できあがった麦汁に酵母を入れ発酵させてアルコールと炭酸ガスを作り出し、最後に熟成させたら完成だ。とはいえ、これはあくまでも本当に大まかな流れでしかない。発酵の方法や、ホップや酵母といった原料の種類で分類すると、150以上ものスタイルがある。中でも、クラフトビールで人気なのはフルーティな香りのペールエールや、ホップの強い苦味が特徴的なIPA。もちろん、それ以外のスタイルに誇りを持って造っているブルワリーもたくさんある。
では、クラフトビールって一体どんなビールなのだろう? 一般的には小規模で、独立していて、職人が個性を生かして造っているもの、と説明されることが多いものの、明確な定義はないという。たとえば、90年代の日本では地域の町おこしにビールを売り出す「地ビール」が流行したが、地ビールとクラフトビールのはっきりとした違いは実はない。自信を持って造り続けていれば、それはクラフトビールと呼べるのかもしれない。
5000年前から続くビールの歴史は、大きな川が合流と分岐を繰り返すようにして発展してきた。今はいわば、たくさんの支流が生まれて、それぞれに活気づいているのがクラフトビールシーンと言えるのかもしれない。多摩川流域に点在する15のブルワリーも、どれも個性的。まずはここから、クラフトビールの川に飛び込んでみよう。
多摩川のクラフトビールをめぐる
TAMA BEER RIVER
クラフトビールの川に飛び込む
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