「タネも仕掛けもあるんです」
完成した絵を見にきた観客たちを前に、そう、高らかに宣言する蘆雪の姿が見えた気がした。実際にそのような言葉を使ったわけではないにしても、自身の絵のたくらみにどれだけ気づくことができるのか。ほくそ笑みながら観客を見つめていたのではないか。
これはぼくの感想に過ぎないが、あなたはどう感じるだろう?
蘆雪といえば「虎の絵」。愛嬌のある表情が見る人を引きつけてやまないが、あの絵は無量寺の本堂を訪れた蘆雪が実際にこの場で描いたもの。そこには、この場所を活かしたアイデアや、この部屋にあるべき理由が詰まっている。言い換えれば、本やネットの写真で眺めていてはわからない、この場所で見るべき理由があるのである。
もちろん、蘆雪は絵の解説書を残したわけではない。だから、すべての言説はのちの人の想像に過ぎない。あなたも蘆雪の筆を追いかけながら妄想を走らせてほしい。
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