貝をぬける
BnA Alter Museum

この度 BnA Alter Museumでは、日本図案館、船川翔司、本山ゆかり の3組による展覧会『貝をぬける』を、2025年10月18日より階段型ギャラリーSCGにて開催いたします。

「ものを見る」と一言で言う時、この行為は具体的にどのようなものでしょうか。
普段私たちは、展覧会という場で作品と言われるものを鑑賞する際、何か対象となるものを見つめ眺めながら、考えを巡らせてはある瞬間に直観したりしなかったりすることでしょう。
さらに詳細に言えば、対象を見つめる、の中に含まれることとは、対象が他から区別され自律していると認識される瞬間、ものの肌理の連続を通して輪郭(としての全体)を感知しているということです。
また、ある瞬間の直観とは、作品におけるモノやコトを通して、私や私たちを含めた宇宙における既存の場所や関係を各人が置き換えうる契機とも言えるでしょう。

本展における『貝』とは、その肌理と輪郭の関係を一望する記号的イメージであると同時に、作品にある多様な経験へと接続する場所が殻という境界を持って内と外に分け隔てられていることを指しています。
また本展会場である階段型ギャラリーSCGとは、10階まである非常階段に沿って巻貝のように螺旋状に上り下りしながら鑑賞する、階層とガラスによって隔てられた展示空間となっています。
この会場において鑑賞者は、作品固有の生をもって経験される『貝』がフラクタル状に増殖しながら折り重なることで、その内と外を通り抜けていくのです。

改めまして本展では、このように定義される『貝』を通して作品とその鑑賞体験に改めて向き合い、今ある現実に対するフィクションとしてのメディウム、精神性、歴史性に触れることで鑑賞者自身の境界を曖昧にし、再編成していくでしょう。
明治期の図案革新文化から生まれた木版画の図案集を中心に、江戸期から昭和初期の"図案にまつわる物"を収集・展示する日本図案館、特定の環境や状況から得る経験に基づき、感得する主体を拡張する個別具体的な事象について制作を行う船川翔司、絵画をつくる/鑑賞する際に起きる様々な事象を解体し、それぞれの要素を注視するための仕組みを作る本山ゆかり、以上3組による作品展示が展開されます。

1881(明治14)年に構想され実現しえなかった高橋由一の『螺旋展画閣』のように、歴史的な多義性を現在と照らし合わせながら、こうありえた/ありえるかもしれない時間をお楽しみいただければ幸いです。

[ 文: 筒井一隆 ]

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