大地の芸術祭とON THE TRIP、アプリ公式提携。「そして、アートはあなたに問いかける」

READIO ON THE TRIP vol.5

アートは、窮屈な世の中から抜け出すための最後の砦

ON THE TRIP が最初に取り組んでいるのは「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」。大地の芸術祭の公式アプリとして、主なアート作品にまつわる物語を紹介しています。

ガイドのコンセプトは「そして、アートはあなたに問いかける」。
現代アートってなんだかよくわからないですよね。でも、アートって、その「なんだかよくわからない」ところを、なんとか自分で考えて、自分なりに感じることだと思うんです。ぼくたちは、そのキッカケをつくりたいと思いました。それが「問い」を投げかけるということ。たとえば、「たくさんの失われた窓のために」という作品なら、「失われた窓」とはどういう意味なのか? と問いかける。自分なりに感じるという体験を邪魔せずに、考えるとっかかりをつくりたいというのが、ぼくたちの想いでした。

成瀬:大地の芸術祭の総合ディレクターは北川フラムさん。ぼくが好きなフラムさんの言葉で、「今は、アートしか残っていない」という話があります。効率化が求められる管理社会で、みんなが右に倣えで、正直、窮屈。そんな中、アートって突拍子もないものでよくわからないものが多い。逆に言えば、そういうことができる自由さがある。そんなアートは、窮屈で不自由な社会から解放される最後の砦だと。

そうフラムさんが話していました。だから、その最後の砦に出会ったときに、自分が何を感じるかということは、とても大事だと思うんです。普段持っている思考の枠から外れて考えられること。もちろんそれがアーティストの願いというわけではないかもしれません。アーティストは、好きなことをやってるだけだけど、それを受け取るこちら側がどう解釈するかということを経て、アートはその人のもとなる。だから作品と向かい合い、自分ごとにするのが大切だと思いました。

北川フラムさんの、狂気にも近い熱量

大地の芸術祭は、ON THE TRIP がはじめてつくるガイドとしてぴったりだなと、ぼくは書き進めるたびに思っていました。ON THE TRIP のガイドは目には見えない土地の物語を可視化するものでありたいと考えています。でも、大地の芸術祭がまさにそれをやっている。ぼくたちはそれを翻訳するだけでよかった。大地の芸術祭のガイドをつくろうと言い出したのは成瀬さんでしたが、どういうキッカケで大地の芸術祭のガイドをつくらせてもらえることになったのですか?

成瀬:ぼくは瀬戸内国際芸術祭が大好きで、3年に1度、必ず通っていました。去年の8月に自分の中で揺れていた時期があったんですが、その時にも瀬戸内にいったんです。作品を見ることが目的なんだけど、そこに旅がある。そのときに、ON THE TRIPのようなアイデアを芸術祭でやるのは面白いんじゃないか、と思いました。

時を同じくして、5年前にスペインを一緒に旅したOisixの高島宏平さんと久しぶりにお会いして、ON THE TRIPの話をしたときに、「大地の芸術祭のオフィシャルサポーターにならない?」と声かけていただいたんです。で、実際にオフィシャルサポーターになって、北川フラムさんやサポーターの皆さんからお話を聞かせていただく中で、大地の芸術祭の想いにものすごく共感するようになって。北川フラムさんが、どうして大地の芸術祭をやろうとしたのか。いろんな人の反対を受けながら、ひとりでもやっていくという覚悟が本当にかっこいいと思いました。

実際に、大地の芸術祭を旅してみても、本当におもしろい。作品にはその土地にある理由があるんですよね。窓の作品にしても、「どうしてここに窓枠があるのか」。窓枠から見える景色に、その作品の物語がある。フラムさんやサポーターの皆さんと一緒に見てまわると、作品のコンテキストをいろいろ教えてくれる。一方で、その物語はどこにも出ていません。ネットやガイドブックにはもちろん載っていない。だから、もっと多くの人に知ってもらいたいと思ったんですよね。

作り手も楽しかった。それが匂いにつながった

北川フラムさんをはじめ、大地の芸術祭の運営メンバーである原蜜さんや山口朋子さん。それにサポーターの皆さんの力を、ものすごくお借りしたガイドになりましたね。

成瀬:ほんとうにそうですよ。オフィシャルサポーターの方たちは、みんな忙しい人ばかりですよ。そんな方たちが「なぜやるのか」という話でもありますけど、みんな、大地の芸術祭のコンセプトに共感してるんです。チームという雰囲気があります。みんなで大地の芸術祭の里を旅して、夜までお酒を飲んで、そのたびに絆も深まったりして。

ぼくたちのガイドに関しても、みんなで一緒につくっているという感覚がありました。みんなの思いがつまってるというか、それが手触り感であり、匂いになっているというか。土くさい感じ。とにかく、みんなでつくっていくということが、ぼくにとってはすごく嬉しかった。できあがっていく過程が楽しかった。作り手が楽しいとコンテンツも楽しくなっていくと思っているので、おもしろいガイドになっているのではないかと思います。


大地の芸術祭のオフィシャルサポーターの皆さんには今回、ガイドの音声を吹き込んでいただきました。

成瀬:嬉しいのが、音声の吹き込みの一部をサポーターの方々でやろうとなった時に、「この作品の音声をやりたい」と率先して手をあげてくださったこと。一番最初に手をあげてくれたのはistyleの吉松徹郎さん。「おれ、光の館やりたい」って言ってくださって。


次に、Oisixの高島宏平さんが「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」をやりたいと。


クラウドワークスの吉田浩一郎さんが「たくさんの失われた窓のために」を、フリーランサー・作家の安藤美冬さんが「最後の教室」をやりたいと、どんどん手をあげてくださった。


みんな、自分の好きな作品があって、その作品の音声をやりたいと言ってくださる。アソビューの山野智久さんは「まつだい『農舞台』」にあるいくつかの作品。リディラバの安部敏樹さんは「ポチョムキン」。マクアケの坊垣佳奈さんは「脱皮する家」。モデルの田中里奈さんは、「花咲ける妻有」、「帰ってきた赤ふん少年」。「○△□の塔と赤とんぼ」は、大地の芸術祭運営者の原蜜さん。


「家の記憶」はDEAN AND DELUCAの横川正紀さんがやってくれたのですが、実は作家の塩田千春さんと同級生であることが判明して。その作品のことをもっと好きになるという物語が生まれたりもして。


他にも声優の木下さつきさんや、五月野あずみさん、はたゆりこさんにも出演してもらいました。本当にみなさん、素晴らしい方々です。

ON THE TRIPが、旅の新しいスタンダードになる


成瀬:とにかく、皆さんが力を貸してくれたことが、今回、ぼくたちが大地の芸術祭のガイドをつくることができた理由です。この場を借りて再度お礼を言わせてほしいです。最後になりますが、北川フラムさんが新しい取り組みを理解してくださり、挑戦しようとおっしゃってくれたことに本当に感謝しています。アプリでGPSと連動させながら、アート作品の物語をオーディオとビジュアルで楽しむ。この新しい取り組みが、これからのスタンダートになればと思っています。

大地の芸術祭のアプリはこちら

大地の芸術祭がアートによって土地の物語を「見える化」しているように、ガイドによって旅先の物語を「見える化」する。ぼくたちのコンテンツはそういうものでありたい。大切なことにあらためて気づかせてくれた大地の芸術祭。

ガイド本編のダウンロードは600円。料金の一部は「大地の芸術祭実行委員会」に充てられ、芸術祭開催費用となります。「体験版」として無料で楽しめるガイドもあるので、ぜひダウンロードしてお試しください。

ON THE TRIP. ぼくたちの旅は続く。
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