禅と出会った人々には、どんな変化が訪れるのだろう。
ここで紹介するのは、「InTrip」で禅を軽やかに楽しむ人々の声。なぜ禅の世界に魅了され、どのように暮らしに取り入れていったのかを聞いてみました。それぞれのエピソードは、“日常にある禅”を知るヒントになるはずです。
二人の子どもが巣立ち、穏やかな日々を淡々と過ごしていたという萩尾ようこさん。「禅には興味が無く、むしろ自分には向いていないと思っていました」という萩尾さんの暮らしは、思いがけず禅を取り入れたことによって、新たな展開を迎えます。
「InTrip」で知った禅の呼吸で体感覚が向上し、集中力、感性が磨かれていく中、躊躇していた願望にも気づくことに。「穏やかな日々の中で外に向かなかった気持ちが解きほぐされ、心から湧き出る思いに正直になりました」。内なる情熱に導かれるまま、チャレンジに満ち溢れた日々が始まります。
染み渡る声と
穏やかな呼吸に惹かれ、
禅の世界へ
――萩尾さんの現在の暮らしと、禅に興味を持ったきっかけを教えてください。
娘が二人いますが、長女は社会人、次女が大学生になり、子育てはひと段落しています。月~金は会社勤めで経理の仕事、週末は趣味の登山を楽しむことが多いです。
なにかきっかけや困ったことがあって禅に興味を持ったわけではなく、次女に「すごくいいアプリがあるから!」と勧められ「InTrip」を使いはじめました。娘が気に入って使っているアプリをなかば強制的にインストールされたのが、禅との出会いです(笑)。
――では、禅で変わりたいとか、心を落ち着けたいなど目的があったわけではなく、禅にはあまり興味がなかった?
正直言って、全く興味がありませんでした!長女がヨガのインストラクターをしていて、自宅でヨガや瞑想をしている様子を見ていましたが、「黙って座っている瞑想のなにが面白いの?」という感じでした。瞑想や禅は長時間じっとしているのが辛そうで、身体を動かすのが好きな私には合わないだろうと。
「InTrip」は、登録すればはじめの一か月無料で使えたので、朝なんとなくつけていたテレビや音楽のかわりに、ちょっと聞いてみてもいいかなと軽い気持ちで使い始めました。強く勧めてくれた娘の手前、まったく手を付けないわけにもいきませんし…。
――勧められて、軽い気持ちでアプリを試してみて…どうでしたか?
まず気に入ったのが、伊藤東凌和尚の声の響き。「自信を持って仕事に取り組む」「ストレスを癒す」などのテーマで東凌さんが語りかけてくるのですが、心身に染み渡るような心地よい声で語り掛けられると、リラックスしたり、気持ちが上向いたり、心が整っていくように感じました。
アプリには色々なプログラムがあったので、深く考えず適当に選び、毎朝聞き流していて、テレビや音楽で一日を始めるよりも、こちらのほうがいいなと思いました。アプリには瞑想音楽も入っていますが、私は東凌さんのお話を音楽のように聞くのが好きです。
もうひとつ、感銘を受けたのが禅の呼吸法です。プログラムでは身体へのアプローチが多く、ゆったりとした呼吸に意識を向けていきます。以前、強いストレスがかかる経験をしたとき、呼吸のコントロールを失い、本当に苦しく辛かったことがあるので、呼吸を整えることの大切さは痛感していました。難しいことを言われるのではなく、呼吸から心身にアプローチしていく禅のやり方が、私に向いていたのだと思います。東凌さんの声と呼吸法に魅了されて、現在も使い続けています。
呼吸で五感が
研ぎ澄まされ、
自然との対話がはじまる
――禅では、どんな呼吸をしますか? 禅の呼吸を続けることで、どんな変化を感じていますか?
まずしっかりと息を吐くよう促されました。意識をしないと、つい吸うことに気が向いてしまうけれど「そうか、吐くのが先なのか、まず自分に溜まっているものを出すのね!」と呼吸への意識が変わりました。それからゆっくり呼吸に意識を向けて全身に満たしていくと、今まで意識していなかった体の隅々までも感覚が広がるようになって…五感が研ぎ澄まされていく感じです。
集中して呼吸法を実践している訳ではなく、朝の準備やメイクをしながらですが、それでも充分効果を感じられます。禅の時間をあえて確保するのはハードルが高いのですが、聞き流しだと気負わずできるので、もう半年以上続いています。
普段の仕事で細かい数字を扱うので神経を使いますが、朝一番の「ながら禅」でストレスを感じにくくなり、集中力が高い状態で仕事ができます。デスクワークで姿勢が乱れてきたら、「身体のここが力んでいるから力を抜こう」と気がついたり、感覚が鋭くなってきました。
――萩尾さんは身体感覚が敏感なようですね。それが禅でより研ぎ澄まされたのでしょうか。
そうかもしれません。趣味の登山も、爽快感や達成感が心地よくて続けているのですが、禅を始めてからは、山を登るたびに感覚が鋭くなるのを体感しています。岩場が続くハードな登山道を一人歩いて山頂に着いたとき、目の前に広がる景色、鳥の声、風の音、すべてが身体に染み渡るような感覚に包まれて。耳を澄ますと、周りの山々からも鳥の声が聞こえてきました。こんなにたくさんの鳥がいて、鳴き声もそれぞれに違って、なんて美しいのだろう…と感動してしまって。それに、風ってこんなに心地よかったかしら?とハッとして、まず吐いて、吸って…と風を感じながら禅の呼吸を繰り返しているうちに、身体の中が洗われていき、すべてが入れ替わるような感覚になりました。
――五感で自然を味わっている様子が伝わってきます。禅で山の歩き方、自然との触れ合い方が変わったようですね。
そうですね。「InTrip」では身体へ意識を向けるようなアプローチが多いので、山中でも実践しています。一人で道なき道を行く時も、呼吸を整え、自分の身体に意識を向けて歩くことで、慌てたり、焦ったりしなくなりました。
登山道の別れ道で進むべき方向が分からなくなったとき、どうしたものかと周囲を見渡していたら、片方の道に蜘蛛の巣を見つけました。巣は破られることなくきれいな状態だったので、その道を人が通っていないことが分かり、反対の道へ進むのが正解だと判断できました。以前の私なら蜘蛛の巣に気づかなかっただろうし、どうしようかとパニックになっていたと思います。
バイクに車に、
ワクワクする挑戦は
始まったばかり
――蜘蛛の巣と対話して道を見極めるとは…。どこにでも身一つで行けそうですが、今後挑戦したいことがあれば教えてください。
今年の夏は、南アルプスの縦走にチャレンジしたいです。できれば一人で。その目標に向けて毎週末山を登ってトレーニングしています。今は膝の調子が良くないのですが、無理するのではなく、膝に意識を向けて身体と相談しながらやっていけばいいと思っています。
あとは、「InTrip」のプログラムで、波の音を聞きながら瞑想するというのがあったのですが、それも近々実現したくて!波打ち際にテントをはって、波の音を聞きながら瞑想ができたら…とイメージが膨らんでいます。子どもを産む前はバイクに乗るのも好きだったので、バイクで一人旅にも行きたいし、車の長距離運転にも久々に挑戦したい。やりたいことがどんどん出てきて、とまりません(笑)。
――禅はじっとしているのが辛そうというイメージだったはずが、生活に取り入れてから、逆に活動的になっているのが面白いです。
禅をはじめて感覚が鋭くなったら、自分が好きなこと、やりたいことにも気づき、躊躇していたこと、若いころ好きだったのに忘れていたこともよみがえってきました。バイクも車も、もう50代だし無理だろうと諦めていたのに、今は何でもできる気がしています。バイク用のグローブを注文してちょうど届いたところで、早く乗りたくてワクワクしています。あとはまたがって出発するだけ。ダイビングもやりたいです!
――仕事に登山、新しいチャレンジと時間が足りなくなりそうですが?
やりたいことがあると、テキパキ動けるようになります。自分の時間を確保するために家事を効率よく済まそう、仕事も集中して早く終わらそうと思うので、時間の使い方が上手くなります。これも禅の効用ですね。
子育てに忙しかった時期に「InTrip」に出会えていたらよかったです。育児の難しさや辛さを感じても、視点を変えて前向きになれたり、日々の疲れも癒されていただろうなと感じます。
なので、今子育てに奔走しているお母さんたちにも「InTrip」を教えてあげたいです。自分の可能性を引き出すヒントがたくさん詰まっていますから。はじめは、なんで私が禅をやるの?と思っていましたが、今は勧めてくれた娘に感謝の気持ちでいっぱいです。
――子育てが落ち着き、穏やかな日々を送りながらも、なかなか外へ気が向かなかったという萩尾さん。未知のアプリとの出会いから半年たった今では、仕事や趣味の登山への意欲が深まり、これまで思ってもみなかった新しい世界に目を輝かせています。
「このインタビューの前も、実は京都の大文字山に登ってきました。午前3時起きです!」
持ち前の前向きさに、禅で磨かれた感性とチャレンジ精神をたずさえて、まだまだ挑戦は続きそうです。
聞き手 ライター・野村佳未
萩尾ようこさん
平日は経理として働き、週末は登山などの趣味を楽しむ。娘2人(長女社会人、次女大学生)の母。次女の勧めで「InTrip」アプリを知り、禅を生活に取り入れる。