禅と出会った人々には、どんな変化が訪れるのだろう。
ここで紹介するのは、「InTrip」で禅を軽やかに楽しむ人々の声。なぜ禅の世界に魅了され、どのように暮らしに取り入れていったのかを聞いてみました。それぞれのエピソードは、“日常にある禅”を知るヒントになるはずです。
「自分を厳しく律することを求められそうで、憧れるけど、ちょっと遠い世界でした」と、当初の禅へのイメージを話してくれた、本間美和さん。その思いがくつがえされたのは、はじめて参加した建仁寺・両足院の坐禅会での体験でした。
副住職・伊藤東凌(とうりょう)和尚が導くのは、それまで抱いていたイメージとは反対の“優しく心地よい禅”。瞬く間にその世界に魅了され、引き込まれます。
その後、禅アプリ「InTrip」を使い始め、禅を暮らしに取り入れたことで、「感情の波が大きく、ネガティブなことばかり考えがちだった」という本間さんの内的世界が、大きく変化していきます。
ありのままの私に戻れる、
優しい禅との出会い
――はじめに、本間さんと禅との出会いについて教えてください。禅といえば瞑想、坐禅などのイメージがありますが。
InTrip代表の成瀬さんに誘われて、両足院で開かれている朝の坐禅会に夫と二人で参加しました。まず、すがすがしい空気の中に登場した、東凌さんの静謐(せいひつ)で神々しいたたずまいに心奪われました。
緑豊かな庭園、静けさの中に響く鳥の声、東陵さんの立ち姿、すべてが相まって美しすぎて。その最初の印象で「ああ、私この世界が好き」とピンときましたね。
(伊藤東凌和尚)
――世界観に一目惚れした感じですね!実際に坐禅を組んでみて、どうでしたか?
まず東凌さんから、坐禅の最中に雑念が浮かんでも、消そうとせずに眺めればいいというお話がありました。雑念は良くないもので、浮かんだらすぐに消さなくては!と思っていたのに、否定する必要はない、そこにあることを認めて、ただ見ていればいいと言われて、ふっと気持ちが楽になりました。あれ、厳しくないなぁと。
――禅寺で坐禅を組むというと、確かに厳しげな印象があり、緊張しそうです。
ですよね。雑念を持ったらアウトで、動いたら肩を木の棒でパーン!と叩かれるあのイメージです。なのに、違ったんですよ。坐禅を組んでいる最中は、大海原をたゆたっているような感覚でした。浜辺に座ってただ波を眺めているような…。雑念は消すのではなく、そっと両手ですくって遠くに流すイメージ。今ここに自分がいるという感覚に浸っているのが心地よくて、本当に優しい時間でした。
――厳しさではなく、思いがけない優しい時間を体験した。普段、自身をいたわるような時間は取れないですか?
フリーランスでライター・編集をしながら、男児二人の育児に追われていて、物事を深く考え、自分と向き合うような時間が取れませんでした。何か考えはじめると子どもの泣き声で中断され、ああ、もうごはん作る時間だ…となって、いつも中途半端。私には、それがすごくつらかった。
でも坐禅を組んでみたら、上滑りしていた思考が戻ってくる感覚がありました。呼吸を整えてただそこに座っていたら、探したり深めたりしなくても「あ、私ずっとここにいたんだ」と気付いて。ありのままの私でいいと思えました。
問いを立て、
イメージすることが
夢を実現する力に
――坐禅会は少し特別な経験だったと思いますが、その後どのように禅を生活に取り入れていったのでしょう。
坐禅会の後、成瀬さんに禅アプリ「InTrip」を教えてもらい、使い始めました。朝早起きしてアプリを起動すると東凌さんの声が聞こえてきて、それだけで幸せ感がすごい。両足院の朝の情景に戻り、日常から禅の世界に吸い込まれていきます。お気に入りの「一日一禅」というプログラムで、毎日違うテーマで10分間東凌さんからの問いに向き合ううちに、ことあるごとに自分自身に問いを立てるクセがついてきました。
――プログラムではどんな“問い”をされますか?
「あなたが死ぬときにそばにいて欲しいのは誰?」「最近うれしかった瞬間は?」など、普段なかなか考えないようなことから、日常のことまで様々な問いがあります。その問いに答えることでさらに「なぜ私はそう思う?」「あの時うれしかったのはなぜ?」と問いが深まります。問いを繰り返すうちに自分の本質に迫っていくので、こうありたいという理想像や、実現したいことも見えてきました。
――問い、答える、を繰り返していくうちに、自分の本質にたどり着く。一人で禅問答をしている感じでしょうか。
そうですね、問いを立て、思考するクセがつきました。私は元々自己肯定感が低くてネガティブなことばかり考えてしまうタイプでしたが、前向きなイメージを広げてくれる問いがたくさん出てくるので、ポジティブなイメージをする力もつきました。夢や目標をはっきりイメージするようになってから、願いが叶うようになりました。
――願いが叶うようになる! それはぜひ、イメージしていく方法を知りたいです。
坐禅会をきっかけに、東凌さんとInTripの禅プログラムを作る仕事をご一緒することになり、良いイメージをすることで思考が変わり、現実も変わっていくというお話を伺いました。
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私は書くことでイメージしやすくなるので、“妄想ノート”を作りました。理想の自分、叶えたいこと、欲しいもの、思いつくポジティブな妄想をどんどん膨らませて、ノートに自由に書き込んでいきます。
「1億円欲しい」とか、本当に何でもあり。そして、実現したシーンを具体的に思い浮かべます。できるだけリアルに細部まで妄想するのが効果的と聞いたので、その時何色の服を着ているか、何を飲んでどんな味がするか、誰がどんな視線を投げかけてくるかなど、五感をフル活用してイメージします。これがまた楽しくて!もう実現したような気持になって、ワクワクします。
――妄想ノート、さっそく取り入れたいです!どんな願いが叶ったのか気になります。
仕事に関する二つの願いが叶いました。一つ目は「しゃべる仕事がしたい」。話して伝える仕事をしたいという希望が叶い、コミュニティラジオのパーソナリティをする機会に恵まれました。二つ目は「憧れの人と一緒に仕事がしたい」。編集者として心から尊敬する憧れの方から、記事執筆の依頼をいただきました。今、その記事を書いている最中です。もう死んでも後悔は無いくらい充実しているけれど、原稿をアップするまでは死ねません(笑)。
(本間さんが産後から数年間、自分の気持ちを書き溜めたノートの山。思考がなかなか深くならないもどかしさを感じながら、心と対話したくて試行錯誤していたという)
感情=私ではない
という気づきで、
生きるのが楽になる
――大きな願いが二つも叶うとは、イメージの力、すごい…!ネガティブなことは考えなくなりましたか?
ネガティブな感情は早めに手放せるようになりました。禅をはじめる前は、自己嫌悪で泣きたくなったり、実際取り乱すこともありました。自分の欠点、過去の失敗、辛かったことなどを思い出し、反芻していましたね。流血してかさぶたになったのを、わざわざはがしにいく感じ。東凌さんに「それはあえて心に傷を刻み付けているようなもの」と言われて、もうやめようと思いました。そんなことをしても全然いいことが無いとやっと気づいて。感情の波が激しかったのが、今はだいぶ落ち着いています。
――辛い感情を手放したいという人、多いと思います。どうやって手放していますか?
禅の学びを活かし、否定せず、俯瞰して感情を見ます。「ああ、私は今怒っている。イライラしている」とただ眺めて、認める。以前は感情にからめとられて、私のすべてが怒りやイライラになっているようでしたが、今は感情=私自身では無いと分かります。私という本体に感情がくっついているだけだと知れば、感情に飲み込まれずに手放せます。
そうそう、以前はイライラしたり不機嫌になると、なかなか気持ちを戻せなくて「誰かケーキでも買ってきて私の機嫌とってよ!」という感じでした。
――ちょっと手のかかる面倒な人だったのが、自分の機嫌を自分でとれるようになった。
このつらさをなんとかして!と他力本願だったのが、軸が自分に戻りました。「InTrip」の「自己肯定感のプログラム」を実践するうちに、頑張らなくていいから自分を認めてあげようと思うようになって。“たくさんの自分を認める”“満たされていると知る”など、当時の私に必要なメッセージに助けられました。感情に流されず、自分で気持ちを切り替えられるようになり、生きるのが楽になりました。自己肯定感低めの方には試してもらいたいですね。
自分を責めてばかりいたときは、手相やスピリチュアルカウンセリングが好きでした。誰かに自分のことを決めてもらいたかったのだと思います。
――本間さんのような変化を実感するには、継続が大切だと思います。禅を習慣化するコツはありますか?
とりあえず、アプリのアイコンを押すこと。朝起きたらまず押す。瞑想音楽を流して、東凌さんの声をひとまず聴く。それだけで、禅の広大で限りなく優しい世界が広がっていき、穏やかな気持ちで一日をスタートできます。
プログラムを全うできなくてもいい。以前の私なら、最後までできないとイライラしていたかもしれないけれど、できない日もある、できる日もある、それでよしと思って続けています。禅は、そんな私もすべて包み込み、かたわらで見守っていてくれる、大きな存在です。
――「InTrip」のプログラム全制覇を目指しているという本間さん。
「禅をはじめて、本当に幸せになりました」という笑顔からは、ネガティブなイメージに取り付かれていた過去の様子は感じられませんでした。
とりあえず、アイコンをおしてみる。それから、妄想ノートの用意も忘れずに!
聞き手 ライター・野村佳未
本間美和さん
1976年生まれ。メーカーの営業から転身、リクルート『ゼクシィ』や講談社『FRaU』の編集者に。33歳のとき、夫と2年間の世界一周へ。旅ブログ「ひげとボイン」がきっかけで旅行記『ソーシャルトラベル』を出版。帰国後は震災後の東北に通い『東北復興新聞』を発行。2児の出産を経て現在はフリーの編集者・ライター。全国各地でママ向けライティング講座の講師も。大人志向の母向けメディア『hahaha!』の編集長。