InTripでは、2回目となるオンラインイベント「マーケターと僧侶が実践する思考力の鍛え方」を1月28日に開催しました。
“マーケターと僧侶”という、ほかにはない異色の組合せで開催されたイベント。
50人以上が参加し、前回と同様、参加者のみなさんからゲストと伊藤和尚にたくさんの質問が集まり、また坐禅体験も好評をいただきました。
イベント当日の様子をレポートします。
出演者
ゲスト
田中 安人 氏/株式会社グリッドCEO、株式会社吉野家CMO
西井 敏恭 氏/株式会社シンクロ代表取締役社長、オイシックス・ラ・大地株式会社 執行役員CMTほか
モデレーター
伊藤 東凌 氏/両足院副住職、株式会社InTrip 代表取締役僧侶
成瀬 勇輝 氏/株式会社 InTrip 代表取締役社長
第一部
「マーケターと僧侶が実践する
思考力の鍛え方」とは?
「考える力」というテーマで、マーケターとしてビジネスの最先端で活躍する田中氏・西井氏と、伊藤和尚との鼎談が始まりました。
「考えることの重要性に気づいたきっかけは?」という問いに、田中氏・西井氏が自身の経験から話します。
田中氏は、子どもの頃から鏡に映る自分を見て、「自分とは何か」を考えるなど、早くから“考えること”に触れていた子どもで、16歳の時に哲学者デカルトに出会って深く考える様になったそうです。
また、かつて会社の経営やマネジメントがうまくいかなかったり、倒産した経験から、「桃太郎理論」を考案したと話します。
*桃太郎理論とは・・・論理だけでなく、感情や人間性に訴えかけていくことが重要であるというマネジメント理論
たとえば、現金で集めた人は、困難な状況になると去ってしまいます。
(桃太郎の)きびだんごは“パッション”であるべきで、みんながハッピーになるような設計をすると、一流の人間が集まってくるようになると話しました。
また、田中氏の名前の「安人」の由来でもある、「世の中を平安にする」ことで社会に貢献したいと考えるようになったそうです。
マーケターという仕事を通じて、「誰を助けるか」「世の中を平安にするか」ということを常に考えていると話しました。
続いて、CMOとして複数の会社のマーケティングとシンクロの経営を行う西井氏が話します。
西井氏は趣味で将棋をしており、子どものころ福井県のチャンピオンにもなったことがあるものの、高校になってからはやめてしまったそうです。
30歳を過ぎた頃に久しぶりに将棋をさす機会があり、たった1時間にもかかわらず、ぐったりと疲れたというエピソードを話しました。
すでにマーケターとして“考える”仕事をしており、日々頭を使っていると思っていたのに、本当に頭を使うということはこんなに疲れることだど驚いたそうです。
これまで「考えている」と思っていたことは、実は考えておらず、「過去の経験をちょっと思い出す」に過ぎなかったのだと気づいたといいます。
これを機に、大事な分岐点があったときは、とことん考えるようになり、“本当に考える”時間を持つことが自分の武器になったと話しました。
続いて、「思考力のあるマーケターと思考力のないマーケターでは、どのような差が生まれますか?」という質問が投げかけられました。
田中氏は、「結果」に差が出ると話します。
マーケターとして、1つ1つの施策を回すことはできても、包括的に設計しないと結果を出すことはできません。
たとえば、「(田中氏がCMOを務める)吉野家が社会に何を求められているか」を考えるとき、思考力のあるマーケターなら、社会のトレンドとお客様のニーズを自分の言葉で変換できると話しました。
思考をするときのポイントとして、西井氏は、「考える」の定義を「深く考える」ことにする、と話しました。
何かについて考えてください、と言われたときに、ジャストアイデアなのか、深く考え抜くことなのか、きちんと考えることについて定義をするそうです。
そして深く考える必要があるときには、静かなところで一つのテーマを深く掘り下げるそうです。
InTripのアプリの「一日一禅」を習慣としており、その日のテーマを問われたときに、瞬発的に3つくらい思い浮かぶそうですが、さらに5分くらいじっくり考えると、腹の深いところから新たな考えが出てくると話しました。
伊藤和尚は、自分が深く考えられていないと気づいたときには、「そもそも」と頭の中で問いかけるそうです。
「“そもそも”、なんでこれを始めたのか?」
「“そもそも”、誰をHAPPYにしたいのか?」
そうすることで、深い思考に行きつきやすいと話しました。
続いて、「思考力を鍛えるために、実践していること」について話します。
西井氏は、2回の世界一周を経験しており、旅好きとしても知られていますが、旅行中は常に新しい町で、知らない環境にいるため、“ルーティン”がなく、常に先回りして次何をするか考える必要があると話します。
「意識する」時間を持つことで思考力が鍛えられるからか、旅行をしているときはアイデアが沸きやすいそうです。
日常生活がルーティン化してしまうと、考える機会が減ってしまうため、“deep thinking”でなくても、日々ライトに考える時間を持つことが大切だと話しました。
また、考えたものをアウトプットすることも、思考力を高める機会になるそうです。
本を書いたり、講演したりするときに、自分の考えをまとめるため、それがフレームとなり、思考力が高まるとも話しました。
田中氏は、帝京大学ラグビー部OB会の初代幹事長として大学選手権9連覇に導いた強さの秘訣を言語化した書籍をプロデュースしています。
*参考:「常勝集団のプリンシプル 自ら学び成長する人材が育つ『岩出式』心のマネジメント」(岩出雅之著、日経BP、2018年)
ともするとチーム運営の“ネタばらし”になってしまい、他のチームも強くなるヒントを与えてしまいますが、スポーツの持つ力で良い文化を広めたいという気持ちから、秘策をシステム化し、書籍にまとめたそうです。
他のチームも強くなることで、競技自体のレベルがアップします。
スポーツの世界でも、「個人の思考が世界のレベルを上げる」ことになると話しました。
第二部
坐禅の実践プログラム
第二部では、伊藤和尚による、坐禅の実践プログラムが行われました。
坐禅というと、畳や固い床でないといけないのでは…と思う人もいるかもしれませんが、床に座りにくい場合は、ソファの上でもいいそうです。
椅子やソファの上に座る場合も、背筋を伸ばすことを意識し、頭まで体をまっすぐにして、足をしっかり地面につけると安定しやすくなります。
手は組んでもいいし、横に置いてもよく、楽にします。
呼吸は、鼻からゆっくり吸って、口からゆっくり吐き出します。
部屋でお香をたてたり、ルームスプレーを使うのも、香りを感じやすくなるので、お勧めと話しました。
照明を暗くしてもいい、薄く目を開けて見てもぼんやりと部屋を見ていてもよいそうです。
感覚を閉じるのではなく、開いて、“感じていく”ことを大切にします。
いろいろなものを感じながら、自分の意識を向けていきます。
今回の坐禅のテーマは「決断力」。
質問にきちんと答える、考えを完璧にまとめ上げる、という必要はありません。
今浮かばなくても、あとから浮かぶこともあるので、これから投げかけられる問いについて、ゆっくり考えてみましょう。
伊藤和尚の合図で、坐禅プログラムがスタートしました。
「今日一日の中で、決断したことはどんなことですか?」
「自分の中で最も決断しやすい環境、条件とはどのようなものですか?」
「あなたがもし、より決断力を高めると、どんな変化が起きますか?」
「周りの人が決断しやすくなるために、あなたができることは何かありますか?」
「未来をよくするために、あなたは明日、どんな決断をしますか?」
など・・・
約10分間、伊藤和尚から参加者のみなさんへ静かに問いが投げかけられました。
参加者それぞれが問いに対して思考する静かな時間が流れたのち、再び伊藤和尚の合図で、坐禅プログラムは終了しました。
質疑応答
イベント中に寄せられた質問に、2人のゲストと伊藤和尚が答えました。
Q:タイミングや場所など、考えやすい環境作りで意識してることはありますでしょうか?
(田中氏)
朝、空を見て、朝日を浴びながら考える時間をとっています。
日光を浴びると、脳内でセロトニンと分泌され、精神を安定させたり、脳を活発に働かせる作用があるそうです。
また、週末のオンライン坐禅で、東凌さんからの問いかけをもとに考える時間を取るようにしています。
(伊藤和尚)
考えるたいときにはよく歩いています。
風の音や鳥の声を聞いたり、鴨川のほとりを歩いて川の音を聞いたりするなど、五感を刺激することで、考えやすくなります。
Q:逆に何も考えない時間を意識的に設けたりされていますか?
(西井氏)
意識して設けています。
深く考え始めると、寝られなくなってしまい、そうすると次の日に影響が出てしまうので、寝る前は考え過ぎないようにしています。
最近はInTripのアプリも使っていて、睡眠音楽で寝ています。
Q:いいマーケターになるには、どういう力が大切ですか?ひとつ挙げるとしたら、何が大切か教えてください。
(田中氏)
「好奇心」がすべてです。
(西井氏)
「変化できること」だと思います。
過去の成功体験を捨てて、現状の自分の延長でないところへ、自分をどんどん変えていけるかどうかだと思っています。
イベント概要
考えるってどういうこと?マーケターと僧侶が実践する思考力の鍛え方
■日時
1月28日(木)19時30分~
■プログラム
第一部 テーマは「考える力」
考えることはなぜ大事?
マーケター的思考力って?
思考力って、どう身につける?
第二部 伊藤和尚による実践プログラム
(随時、質疑応答)
InTripでは今後も、【心をととのえ、脳を鍛える】シリーズとして、さまざまなゲストを招いてイベントを開催する予定です。
興味のある方は、InTripのFacebookページでお知らせしますので、チェックしてください。