庭が大きく変わった。その兆しが聴こえるだろうか。
無鄰菴を造営した山縣有朋は、近代日本庭園の新たな表現を切り開いた先駆者である。この庭は施主であり、日本の総理大臣も務めた山縣が自ら設計・監督し、造園家の七代目小川治兵衛に作庭を依頼して作られた。
飛鳥時代から江戸後期まで日本の庭は、宗教観や自然観と深く結びついていた。しかし無鄰菴は、「本当の、自然らしい自然を持ち込むこと」を最も大きな動機として造営されている。
この庭の水は絶えることがない。流れの音に耳を澄ませば山の中にいるような感覚を覚えるはずだ。山中の小川を感じさせる身近な里山の景色。そして奥へ行くほど深山に入っていくかのような、ストーリーを感じさせる景色を見て取ることができる。
無鄰菴に限らず、日本庭園を読み解くキーワードは「無作為の作意」だろう。全てが自然に見えるように手入れを施されているが、実は目に見えているものすべてに庭師の手がかけられていると考えてほしい。一見、無作為に見える庭は、実は作意のたまものなのだ。
庭を作るときも、作庭後に数百年と時間をかけて手を入れ、育むときもそれは変わらない。無鄰菴は、その作庭意図が自然らしい自然をモチーフにしているだけに、より「無作為の作意」を見て取ることができる。
このガイドでは、国の名勝に指定されている無鄰菴の重要な3つのポイントを読み解きながら、その意味と、それらを育む庭師の技術を紹介したい。
また、このガイドの最後には特別体験がある。それは無鄰菴だからこそ楽しめる「サウンドメディテーション」。すべてを聴き終えた後、このガイドが庭に対する見方を変えられるものでありたいと思う。
無鄰菴
庭の見方がラディカルに変わる物語 「庭の見方、はぐくみ方を知る 無鄰菴公式ガイド」
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