STEP2|「バス会社が協力しなくてどうするんだ」
中古バスを手に入れるまで


TIPS
・ベースとなる中古バスを決める
・バスにあるもので活かせるものは活かす
・不要な装備をすべて取り外してスケルトン化する

ベースとなる中古バスを決める



「平成エンタープライズ」の田倉貴弥社長は、ぼくたちにとって頭が上がらない恩人だ。田倉さんがいなければ、バスをオフィスにして働くという夢は、夢物語で終わっていた。

2016年の夏。ぼくたちはインターネットで中古バスを探しはじめた。しかし、最安でも100万円はくだらない。どんな状態のものか見当もつかないし、購入したところで、それをどうやって運んで(普通免許では運転できない)どこで改造すればいいのか(バスが置ける土地もない)。

そこで、ぼくたちは企画書を作ることにした。



「ぼくたちは旅のガイドアプリを作りたい。そのためにバスをオフィスにしたい。」

ON THE TRIP という会社のホームページもない状態ではじめた「バスがほしい」という商談。いや、商談にはなっていない。ただの相談であり、無謀なお願いでしかなかった。田倉さんはそんな話に耳を傾けてくださり、バスを無償で譲ってくれただけでなく、ガレージや工具まで貸してくださった。驚くべきはそれだけではない。バスを改造するための木材やソーラーパネル、蓄電池などの改造費もサポートしてくれると言う。

なぜ、そこまでしてくださるのか。おそるおそる尋ねたぼくたちに、田倉さんはこう言った。

「バスで物語を作ろうとしている若者に、バス会社が協力しなくてどうするんだ」

平成エンタープライズは、夜行バスや貸切バス、スクールバスなど400台を超えるバスと運転手を抱える大企業であり、ゲストハウスやインバウンドメディアも運営するITバス会社でもある。ネット予約での座席指定や、待合所のラウンジ化など、今では当たり前のバス文化も平成エンタープライズから生まれたものが多くある。

しかし、これらの成功は田倉さんがたった一人で、それも田倉さん自身が運転する、たった1台の中古バスからはじまった物語でもあるのだった。

 参考:「日本のバスオタクすげええええ」田倉貴弥氏が海外で話題



平成エンタープライズ社のガレージにはじめてお伺いしたとき、そこで働いている今村さんと萩原さんをご紹介いただいた。「困ったらことがあれば、なんでも聞いていいよ」ありがたくも、そう声をかけてくださった。

平成エンタープライズはバスの整備や改造も自社で行っている。社内での遊びの企画として、バスをキャンピングカーに改造したこともあるという。いわば、今村さんや萩原さんはバス改造のプロ。これほど心強いバックアップはなかった。



そして、譲っていただけることになった、ぼくたちのバスと対面した。トヨタの「コースター」と呼ばれるバスである。実は田倉さんには複数のバスから、「どれでも好きなバスを選んでいいよ」とまで言っていただいていた(信じられない!)。

その中には、先にふれた改造済みのキャンピングカー(バス)も含まれていた。が、それを選ぶのはやめておいた。すでに美しく仕上がっているそれを選べば、改造は楽になるかもしれない。しかし、それでは物語が宿らない。やはり、ぼくたちがゼロからはじめなければ意味がない。そして、選ばせてもらったのがこのバスだ。

バスにあるもので活かせるものは活かす

まず考えたのは、どの部分を残せるかということ。

たとえば、「乗降中」のサイン。これは外さないことにした。後ろの扉を開け放してここからラジオを放送をしてみたい。旅先でお世話になったゲストを呼んでその町の魅力を語り合う。そのときに「乗降中」のライトを灯したい。まるで「ON AIR」のように、である。



そもそもこのバスは、車椅子の方の送迎に使われていたバスだった。そんな物語が宿った「乗降中」のサインを外したくはなかった。外装のデザインについてもそう。青と白のツートーンだが、白地を活かして自分たちのカラーを表現したいと考えた。

内装は「STEP1」で書いたように、明確なイメージを持っていた。木で完全に覆いたいが、四隅のカーブや凸凹のある壁は、木で覆う技術がぼくたちにはない。そこは無理せず元からあるパーツを残すことにした。



はじめから完璧でなくてもいい。ぼくたちにできる範囲で改造して、未完成なまま旅をはじめよう。このバスは旅をしながら成長する。「ON THE TRIP」という、ぼくたちの会社と一緒に。

不要な装備をすべて取り外してスケルトン化する



残す部品のメドがついたら、早速、それ以外の座席を外したり、床や天井を剥がしたりする作業に取りかかる。主にノミを使って根気よくはがしていった。そして、からっぽになったバスを見てこう思った。

「まさに、真っ白なキャン“バス”」

どんなバスになるか、どんな会社になるかは、ぼくたち次第。これが、旅のはじまりなのだ、と。

VAN THE TRIP. ぼくたちの旅は続く。
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